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医療コラム

2021.03.03 医療コラム

No.4 適応障害

うつ病と適応障害は違うのか?とたずねられることがあります。また、うつ状態と診断され、うつ病とは違うのか?とたずねられることもあります。精神科では、うつ病なり適応障害なり特定の病名を診断する前に、状態像診断というのを行います。人が変調をきたす場合にはいくつかの状態のパターンがあるため、現在その人がどのようなパターンの状態にあるのか、診断を行います。うつ状態も状態像の1つで、気持ちが落ち込んで、疲れやすくて、不安で、悲観的でというような場合を、うつ状態とまず捉えます。うつ状態の人の中に、うつ病の人がいたり、適応障害の人がいたりします。適応障害は、あきらかなストレスとなる原因があって症状がおこり、ストレスがなくなると症状が長期間持続することはありません。一方で、うつ病は明らかな原因がない場合も多く、ストレスがきっかけだったとしても、ストレスがなくなっても症状が持続することが多いです。うつ病では基本的に常に物事を楽しめませんが、適応障害で、例えば仕事がストレスの場合には、休日などには趣味の活動を楽しめたりします。

 

DSM-5で適応障害とは、
A. はっきりと確認できるストレス因に反応して、そのストレス因の始まりから3ヶ月以内に情動面あるいは行動面の症状が出現。
B. これらの症状や行動は臨床的に意味のあるもので、それは以下のうち1つまたは両方の証拠がある。

(1)症状の重症度や表現型に影響を与えうる外的文脈や文化的要因を考慮に入れても、そのストレス因に不釣り合いな程度や強度をもつ著しい苦痛。

(2)社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の重大な障害

E. そのストレス因、またはその結果がひとたび終結すると、症状がその後さらに6ヶ月以上持続することはない。

とされます。

 

DSM-5でうつ病は
A. 以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは(1)抑うつ気分、または(2)興味または喜びの喪失である。

(1)その人自身の言葉か、他者の観察によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分
(2)ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退
(3)食事療法をしていないのに、有意の体重減少、または体重増加、またはほとんど毎日の食欲の減退または増加
(4)ほとんど毎日の不眠または過眠
(5)ほとんど毎日の精神運動焦燥または制止
(6)ほとんど毎日の疲労感、または気力の減退
(7)ほとんど毎日の無価値感、または過剰であるか不適切な罪責感
(8)思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる
(9)死についての反復思考、特別な計画はないが反復的な自殺念慮、または自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画

が主な診断基準となっています。

 

うつ病の場合にはストレスの有無に関係なく、種々の症状が、どのような場面でもほとんど1日中2週間以上にわたってずっと続きます。
うつ病の治療は薬物療法、精神療法と休養が主体になりますが、適応障害では、ストレスを環境調整や精神療法などで緩和することが主体となり、薬物療法はあくまでも補助的な手段となります。また、休養が必ずしも症状を緩和しない場合もあります。