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医療コラム

2021.03.03 医療コラム

No.3 強迫症

馬鹿げたことをやってしまうのではないか、罪を犯してしまったのではないか、鍵をかけ忘れたのではないか、大事なものを捨ててしまったのではないか、汚れやバイ菌がついているのではないか、不吉なことが起こるのではないか、人を傷つけるのではないかなど、ふと頭に浮かんでくることが誰にでもあります。そういった考えやイメージが、時間がたって自然に消えたり、ちょっと手を洗ったり、鍵がしまっているか一度や二度確認して安心できれば問題ありませんが、考えやイメージがしつこく繰り返し浮かんできて、打ち消すことができない場合、そのような考えやイメージを強迫観念と呼びます。
強迫観念に伴う不安を打ち消すために、なにか決まった行動(強迫行為;例えば、汚れたと思ったら手をしつこく洗う、鍵がかかっているかしつこく確認する)を繰り返しとったり、不安が起こる場面を避けようとしたり(回避行動;例えば、汚いものを触らない、戸締まりが気になるので外出しない)することが過度になると、日常生活に支障をきたします。そのような状態で生活に支障をきたす場合を強迫症と呼びます。強迫行為や回避行動は繰り返すほど、強迫症の症状は悪くなる傾向があります。

 

DMS-5では、

A. 強迫観念、強迫行為、またはその両方の存在
B. 強迫観念または強迫行為は時間を浪費させる(1日1時間以上かける)、または臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

 

とされています。また、強迫症の類縁疾患(似た病気)に、醜形恐怖症(身体上の外見の欠陥や欠点に必要以上にとらわれ、容姿の確認や他人との比較により精神的に苦痛を感じる)、ためこみ症(過剰にものを集めて捨てられない)、抜毛症(繰り返し体毛を抜いてしまい、それを止めようとしてもなかなか止められない)、皮膚むしり症(皮膚やかさぶた、爪などを傷つけたり剥がしたりする行為を繰り返し、止めようとしてもなかなか止められない)があげられています。
強迫性の治療では、強迫観念→不安→強迫行為→不安の一時的な低下→強迫観念→不安→強迫行為→不安の一時的な低下→強迫観念→不安・・・という悪循環を断ち切ることが重要です。強迫観念や不安は多かれ少なかれ誰にでもあるものなので、ゼロにするのは困難であり、妥当なレベルで本来の生活を取り戻すことが目標になります。