No.6 変換症/転換性障害
以前はヒステリーなどと呼ばれていた病気のうち、以下のような症状をしめすものが変換症/転換性障害にあたります。
DSM-5では、
A. 1つまたはそれ以上の随意運動、または感覚機能の変化の症状
B. その症状と、認められる神経疾患または医学的疾患とが適合しないことを裏付ける臨床所見がある。
C. その症状または欠損は、他の医学的疾患や精神疾患ではうまく説明されない。
が診断基準となっています。
症状としては、脱力または麻痺、異常運動、嚥下症状、発話症状、発作またはけいれん、知覚麻痺または感覚脱失、感覚異常など多彩な症状を呈する場合があります。立ったり歩いたりできない「失立失歩」、声が出ない「失声」などが症状として有名です。アルプスを舞台とした某アニメの主人公の友人の少女も、身体にはになんの問題がないのにも関わらず歩けず車椅子生活をおくっていますが、変換症/転換性障害で苦しんでいるのではないかと考えられます。けいれんしたり、意識消失を伴ったりすることもありますが、名前は似ているものの「てんかん」とは全く異なる病気です。転換性障害では、脳波に異常を認めず、転倒したとしてもケガをすることはほとんどありません。
MSDマニュアル家庭版によると「医師と患者の間に支持的な信頼関係を構築することが不可欠です。かかりつけ医が精神科医や他科の医師(神経科医や内科医など)と協力して治療に当たる診療形態が最も有効となります。考えられる身体的な病気を否定し、重篤な病気を示す症状ではないことを伝えて安心させると、患者は良くなったように感じ、症状が徐々に消失していくこともあります。」とされていますが、特効薬のような薬、精神療法はありません。発症には、心理的要因が関与していると思われますが、心理的要因を探索してもなかなかはっきりしないことが多く、探索そのものが患者さんの負担となることもありえます。変換症/転換性障害の症状とは別に身体の病気をかかえていたり、うつ病を合併していたりする場合には、まずそれらの病気の対応が優先されます。変換症/転換性障害の症状は改善することが多いですが、再発したり、症状が長期間持続したりすることもあります。一見症状がわざとらしく見えることもありますが、意識して症状を出しているわけではなく、本人の苦痛は相当に強いものがあります。
以上でコラムは一旦終了となります。こころの病気で苦しんでおられる患者さんや周囲の方々の理解の一助となれば幸いです。